これは、「男はつらいよ」の寅さんと
社会人になりたての 甥の みつお との会話…
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寅さん「俺に売ってみな」
みつお『この鉛筆を?』
寅さん「そう。お前がセールス、俺が客だ。さ、早く売れ」
(みつおは とまどいながらセールスをはじめます)
みつお『….おじさん、この鉛筆買ってください。
ほら、消しゴムつきですよ』
寅さん「いりませんよ。僕は字書かないし
そんなものは全然必要ありません。以上。」
みつお『ああ…そうですか…』
寅さん「そうですよ。どうしました?それだけですか?」
みつお『だって、こんな鉛筆、売りようないじゃないか』
みつおは、鉛筆を売るのを諦めてしまいました。
寅さん「貸してみな」
この2分後、みつおは思わず
寅さんから鉛筆を買ってしまいます。
寅さんは、一体どんな手を使ったのでしょうか?
ー おまけをつけた?
ーー 2本セットでお得にみせた?
ーーー 返金保証をつけた?
いいえ、全部違います。正解は…
鉛筆を 手に取った寅さんは
こう語り出しました。
じっと鉛筆を見た後、
親戚一同をゆっくり見回します。
寅さん「俺はこの鉛筆みるとな、
おふくろのことを思い出してしまうんよ。
不器用だったからね、俺は。
鉛筆も満足に削れなかった。
夜おふくろが削ってくれたんだ。
ちょうどこの辺に火鉢があってな。
その前にきちーんとおふくろが座ってさ
白い手でスイスイスイスイ削ってくれるんだ。
その削りカスが火鉢の中に入って、
ぷーんといい香りがしてな。
綺麗に削ってくれたその鉛筆で
俺は落書きばっかりして、
勉強ひとつもしなかった。
でもこのくらい短くなるとな
その分だけ頭が良くなった気がしたもんだった。」
(みつおに向き直りこう言います)
寅さん「お客さん、
ボールペンってのは便利でいいでしょう。
だけど、味わいってものがない。」
みつお『そうですねえ』
寅さん「その点、鉛筆は握り心地が一番。な。
木の暖かさ、この六角形が
指の間にきちんと収まる。
ちょっとそこに書いてごらん。
なんでもいいから。」
みつお『うわあ、久しぶりだなあ 鉛筆で字書くの』
寅さん「どう、デパートでお願いすると
1本60円する品物だよ。
でもちょっと削ってあるから、30円だな。
いいやいいや、もうタダで
くれてやったつもりだ。20円、20円。」
(みつおは 「え、いいの?」という顔をした後、
20円を支払います)
みつお『あ!!!』
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いやー、見事ですよね。
では、寅さんの売り方の
何がすごいのでしょう?
・思い出話を語ったこと
・ボールペンとの違いを伝えたこと
・鉛筆の握り心地をアピールしたこと
・手に取ってもらったこと
・価格を安く見せたこと
など、大事なポイントはたくさん
ありそうですが、一番は
「感情を揺さぶるストーリー」
を語ったことではないでしょうか。
みつおは、鉛筆という
モノ自体を売ろうとしました。
一方で寅さんは、
母親との思い出話を語り、
相手の感情を揺さぶりました。
そして元々は必要もなく、
買う気もなかった鉛筆が、
なんだか価値ある物のように見えてきた。
お金を払ってでも欲しくなった。
ということですね。
これがストーリーの力です。
さて、あなたが
売っている物やサービスには、
感情を揺さぶるストーリーがありますか?
ぜひ探してみてください。
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